右手関節機能障害による労働能力喪失期間を争った事案
2018/01/30
呉市で交通事故被害の解決に注力する弁護士の田奧です。
今日は,右手関節の可動域制限という後遺障害が残り,67歳までの労働能力喪失が認められた事案を紹介します。
【ケース】
この方は,バイクで交差点を直進していたところ,対向から右折しようとしていた相手方の運転する自動車に衝突されました。
【当事務所の対応】
事前認定により,右手関節の可動域制限(後遺障害認定等級12級6号)が認定された後に受任しました。
当初,相手方保険会社が提示していた損害額は,労働能力喪失期間を10年として計算したものでした。最近,相手方保険会社の提示として,14級であれば5年,12級であれば10年の労働能力喪失として計算している例が増えています。今回の事案も,そのケースでした。当初の提示金額は,支払額(治療費を除く)が過失割合等を考慮して約440万円でした。
しかしながら,裁判所の基準によれば,骨折による手関節の可動域制限(後遺障害認定等級12級6号)であれば,労働能力喪失期間は67歳までの期間です。
この方は年齢が若い方だったので,労働能力の喪失が67歳までの期間までか,10年間のみかとういう点で判断を誤れば,損害賠償額に大きな差異が出ます。
裁判所の基準の適用事例とそうでない事例を相手方保険会社に説明し,交渉をしました。また,相手方保険会社に対し,この方の会社の従業員が勤続年数に応じて昇進していく一般的なモデルを説明し,労働能力の喪失が継続することを主張しました。
【結果】
交渉の結果,67歳までの労働能力喪失を前提とした示談をしました。
最終的には,治療費を除いた獲得金額は,過失割合を考慮しても1000万円になりました。
【ポイント】
14級であれば5年,12級であれば10年の労働能力喪失という紋切型の認定は,適用されるべき事案とされるべきでない事案があります。この判断を誤ると,損害賠償額に大きな差異が生じます。
骨折による関節の可動域制限の場合,一般的に10年経ったとしても改善はせず,働き続ける限り業務に支障が出ます。怪我の程度に見合った賠償請求をしなければなりません。