警察に診断書を届けて,物損から人損に変更する際の留意点|たおく法律事務所
2021/10/07
呉市で交通事故被害の救済に注力する弁護士の田奧です。
今日は,比較的軽めの交通事故に遭って怪我をした際,診断書を警察に届けて物損事故から人身事故に切り替える際の留意点についてお話しします。
【問題の所在】
診断書を警察に届けて物損から人損に変更する場合,被害者にも加害者にも,メリットとデメリットがあります。
この点をしっかり押さえて,診断書を警察に届けるかどうかを決める必要があります。
【対処法】
まず,本件事故について過失のある当事者は,相手方が怪我をしていれば,刑事罰を受ける可能性が生じます。
警察に診断書を届けることで,警察は,当事者が事故で怪我をしたことを認識し,刑事手続きをすすめます。
当事者が軽微な怪我をしているにとどまっていれば,不起訴という処分で刑事手続きが終了することが多く,その場合は前科はつきません。
ここで気を付けなければならないのは,当事者双方に過失があり,相手方が軽微でも怪我をしていれば,診断書を届けた側についても刑事事件になる可能性があるということです。
次に,本件事故について過失のある当事者には,交通反則金や加点などの行政罰を受ける可能性が生じます。
診断書を届けた側も,相手方も,両方ともについて可能性が生じます。
物損から人損に切り替えると,刑事事件になるので,警察が実況見分の結果を調書にして保存してくれます。
物損のままだと,刑事事件にならないので,事故の記録はほぼ残りません。
相手方が,当初は責任を認めていたのに,突然否認したような場合,刑事記録が残っているとこちらの主張を通せる可能性が上がります。
事故現場が遠方である場合,遠方の警察署に出頭しなければならないことがあります。
物損事故の扱いになっていても,事故で怪我をしたのであれば,お怪我についての賠償を受けることは可能です。
しかしながら,怪我の程度が重篤で後遺障害が残るような場合,当職の経験上,物損事故で届けていると,不利に扱われているような感じがします。
【ポイント】
以上のように,警察に診断書を届けて物損から人損に変更する際,メリットとデメリットがあります。
しっかりと見極めて,納得のいく決定をしなければなりませんね。