裁判所基準で計算した場合と自賠責の基準で計算した場合の損害額の差について(高齢者,圧迫骨折,後遺障害部分)|たおく法律事務所
2021/09/21
呉市で交通事故被害の救済に注力する弁護士の田奧です。
今日も,交通事故被害の損害賠償金額の相場が知りたいという声に応えます。
【問題の所在】
被害者が,加害者の保険会社に対して損害賠償請求をする際,裁判所の基準と自賠責の基準ないし任意保険会社の基準とでは,大きな差が出ます。
被害者の属性を,80歳の高齢女性,夫と二人暮らしをしている主婦,歩行中に車にはねられて腰椎の圧迫骨折の傷病を負い,安静療養後にせき柱に中程度の変形が残って後遺障害認定等級8級相当と認定されたと仮定します。
せき柱骨の圧迫骨折の傷病を負うと,少しずつ彎曲が進み,事故後1年くらいで固定します。
今回も,そのような経過であったと仮定し,後遺傷害部分の損害額を計算してみます。
【対処法】
被害者は,加害者に対する損害賠償請求を弁護士に委任することで,裁判所の基準による損害額の賠償をすることができます。
後遺障害部分の損害額についても,同じです。
まず,後遺障害慰謝料の金額は,裁判所の基準だと830万円となります。
次に,後遺障害逸失利益の金額は,裁判所の基準だと,
3,880,100円(令和元年平均賃金センサス)×45%(労働能力喪失率)×5.4172(平均余命の半分である6年のライプニッツ係数)=9,458,674円
となります。
ただし,若年の主婦より,高齢の主婦の方が,家事の量が少ないという理由で,基礎となる年収額は0.9掛け程度の調整の可能性があります。
これに対して,自賠責の基準では,後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を合わせて,最大819万円です。
自賠責の基準では,高齢者であるという理由で,労働能力喪失期間を減縮認定され,これよりも少なくなる可能性もあります。
【ポイント】
上記のような条件の事故を仮定したとき,弁護士に依頼した場合と,自分で示談交渉をする場合では,後遺障害部分の損害金は,金額にして950万円程度,倍率にして2倍以上の差が出る場合があります。