交通事故被害者が、弁護士特約を使用した場合に、獲得できる賠償金費目の原則と例外|たおく法律事務所
2022/11/22
呉市で交通事故被害の救済に注力する弁護士の田奧です。
今日は、交通事故被害者が、加害者に対する損害賠償請求を、弁護士特約を使って弁護士に委任した場合、どのような費目の損害金を獲得できるかについてお話しします。
【問題の所在】
被害者は、弁護士特約に入っていれば、弁護士費用はすべて保険会社の負担となり、加害者から獲得した損害金は全額自分のものにできて、保険料の等級も下がらないのかが原則です。
それでは、どんな場合にも、全部の費目の損害金を受領できるのでしょうか。
【回答】
弁護士特約があっても、加害者から獲得した損害金の一部を自分のものにできない例外的な場合があります。
それは、裁判で、判決という手続きで事件が終了した場合です。
交通事故の損害賠償請求訴訟で裁判で判決が出ると、裁判所は、請求認容額の約1割を弁護士費用という損害費目として認定してくれます。
この裁判所が認めた「弁護士費用」という損害は、その性質からして弁護士に支払わなければなりません。
そのため、保険約款には、事件終結後に保険会社が弁護士に弁護士報酬を支払った場合、被害者は保険会社に対して裁判所が認めた「弁護士費用」を返還する、という規定があります。
実務上は、弁護士が、被害者に対して判決で認められた損害金を返還する際、「弁護士費用」を差し引いて返還するという扱いがされています。
それでは、判決には全くうまみがないのかというと、そういうわけでもありません。
判決になれば、年3分の遅延損害金を満額回収できます。
事故から相当長期の期間が経過しているような場合には、判決で事案を解決することが適切な場合もあります。
【ポイント】
最近の弁護士特約には、裁判所が認めた「弁護士費用」の損害額を保険会社に返還するという規定があります。
それでも、遅延損害金を考慮すれば、判決で事件を解決する方が良い場合もあります。